Innovation Strategy Times

主にdigital領域に関わる最新トレンドや先進事例を外資系リサーチ会社で働くアナリストが趣味で紹介します

バークシャハサウェイの投資ポートフォリオ

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ウォーレンバフェット率いるバークシャハサウェイのテック関連の投資ポートフォリオの割合が2017年のQ3からQ4にかけて変更があった。 Apple株を買い増して、IBMを引き下げた構図だ。  

バフェットの投資戦略として、市場のダイナミズムが大きく予測が困難なテック市場は基本的に避け、安定的にフリーキャッシュフロー(FCF)を生み出すエスタブリッシュな企業に投資する。 とはいえ一部投資も行うようになりその候補がApple, IBM, Verisign, Veriskの4社となる。

バフェットがAppleを好むのはユーザの圧倒的なロイヤリティー、エコシステム(App Store, Apple Music, iCloud, AppleCare等)、そして安定的な収益源を保持しているからとのこと。 ※The Streetでは“recurring revenue stream(リカーリングレベニューストリーム)”と言っている。 この表現、本当によく見るし、SONYなんかも提唱するようになった。  

一方で、IBMはスタートアップとの業務提携やM&Aを推し進めているが、クラウドではAWSが、ソフトウェアではMicrosoftOracleが、サービスではAccenture、とそれぞれ強い競合と対峙していることが、たとえメインフレームにおいて安定的な収益を得られるとしても、長期的な視点ではバークシャの投資戦略と合致しないのだろう。  

残りのVerisign, Veriskの2社は顧客との長期的な関係を構築していることが長期的観点では予測がつき、好ましいとのこと。 それは同時にプライベートエクイティ(PE)からも狙われやすいということでもある。    

2018年、digital transformationにが関わるM&Aが加速

ベンチャーキャピタリストテックジャイアントのGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)が各々の目指すバリューチェーンのギャップを埋めるべく、VCが保有する投資ポートフォリオの中から企業ショッピングしてくれることを期待している。

米国サンフランシスコを拠点とする投資銀行 Union Square Advisorsによると、デジタル領域でのM&Aが加速するという見通し。

 

投資銀行の見解によると、GAFAに加えて主な買手候補は以下の通り。

  1. digital戦略を推進する大企業、例えばGEやHoneywellがソフトウェア会社買収の一番手
  2. エンタープライズITプレイヤー、例えばIBMOracleそしてSAPがこれに続く
  3. 更にサービス領域のITプレイヤー、アクセンチュアやキャップジェムニも追従

プライベートエクイティは出資先がIPOするようなプレッシャーは以前に比べてかけていないとのことだが、代わりに出口戦略としてはM&Aに大きな期待をかけている。

 

source) Barron’s Digital Transformation Will Spark a Frenzy in Tech M&A in 2018: Prediction

 

 

IoTの新しいマネタイズケーススタディ:Nokia ”sensor-as-a-service”

通信インフラ設備を製造・販売するNokiaは、IoTネットワークに対応した「sensor-as-a-service」のサービスを提供すると発表した。

 

サービスの流れとしてはNokia(IoTネットワーク設備)→移動体通信事業者(データ処理・分析)→政府・地方自治体(公共オープンデータの整備)という流れだ。

 

このサービス提供の背景には、移動体通信事業者(MNO)がスマートフォン普及が成熟に伴い新たな収益源を模索していたこと、政府・地方自治体が都市のデジタル戦略の一環としてスマートシティプロジェクトを推進する上で、スマートカーやドローン向けに交通状況や天候情報などのデータを整備する必要があったことが挙げられる。

 

NokiaはIoTに対応したゲートウェイとセンサーを設置してデータを取得し、Microsoft AzureやAmazon Web Services (AWS)等のプライベートクラウドへ蓄積する。 
詳細はバルセロナで開催されるMobile World Congressにて発表されるが、IoT市場において新しいサービス、彼らの言う”sensor-as-a-service”を今後は推し進めていく予定だ。


出所)Network World  IoT: Sensor-as-a-service, run by blockchain, is coming | Network World

マッキンゼー デジタル革命時代の異業種競争戦略

楽天楽天市場(EC)に加え、楽天カード(クレジットカード)を提供している。楽天とは小売なのか金融会社なのか?

同じくアマゾンもテンセントももはや1つの業界で括ることはできない。

 

スティーブ・ジョブズは、”顧客は自分が何が欲しいのか、それがはっきり示されてようやく理解する”という言葉を残した。楽天のケースでいえば、楽天市場においてクレジットカードという商品を指し示したことで顧客は欲しいものを手に入れることができたことになる。

 

マッキンゼーのMckinsey Analyticsでは、顧客中心の、それぞれの機能がシームレスでかつシナジーのあるバリュープロポジションが今日のデジタル革命時代において競争優位な価値になると提唱した。

すなわちエコシステムのオーケストラレーターこそが、デジタルにより垣根を失った異業種間の競争の主役になるとしている。

 

マッキンゼーが世界で複数業界のCEOにインタビューを実施したところ、このような異業種間競争をほぼ全てのCEOが脅威と捉えており、時に異業種参入を繰り出すプレイヤーは自社が長年付き添ってきた顧客に対し、自社以上の顧客理解を有していると回答した。

 

こうした新しい異業種参入プレイヤーを躍動させる背景には新しい3つの価値観がある。

1. エコシステムの構想

2. データの多様性

3. 顧客体験の追求

 

エコシステムの構想とは、同一業界の競合を意識するという閉じられた脅威への対応ではなく、自社の価値の可能性を拡大して新しくどんな価値が提供できるか検討することだ。

顧客にとって、複数の取引を行うことは時間や手間の観点で苦痛となる。例えばAppleスマホを持つユーザにApple Payを提供することでシームレスな顧客体験を可能にした。

 

データの多様性とは企業がおのおの持つ顧客への理解を繋ぎ合わせて更なる顧客理解に取り組むことを指す。

エコシステムの構想を深めることで、自社は何を抑えていて、どこにデータのホワイトスペースがあるか、それを埋めるためには誰と協力しなければならないのかを把握する。

このとき、自社のデータをAPIを構築し、よりスムースに提供できるかが今後のオープンイノベーション において企業の基本的な姿勢として求められるものとなる。

 

顧客体験の追求とは、顧客との関係こそが自社が顧客理解を深められる重要なタッチポイントであり、それを失わないよう、かつより多くの接点が持てるよう、カスタマージャーニーを分析して顧客のペインを積極的に解消する志向を指す。

自社調達にこだわらず、顧客体験を向上させるために他社の価値をバリューチェーンに組み込む、あるいは自社が部品になるという観点だ。

 

ジョブズが期せずして”connect the dot”と唱えたとおり、点ではなく線での、かつ動的な価値提供こそがデジタル革命時代での競争要因となる。

異業種競争戦略とは古くから提唱される戦略論であるが、今日ますますその意義が増していると言えるだろう。

参考) Mckinsey Analytics  “Competing in a world of sectors without borders” 

 

異業種競争戦略

異業種競争戦略

 

 

 

 

Google、デジタルヘルスケア領域本格参入か

Googleは人間の瞳を見るだけでその人が心臓病を疾患しているどうか判断できると発表した。

 

Google AIにより、画像イメージからその人が5年以内に心臓病を患う可能性があることを70%の確率で予測できることが調査結果より分かった。

 

過去にも機械学習糖尿病の潜在的患者を発見する機械学習を進めていることを発表しており、Googleがデジタルヘルスケア領域に注力していることは明らかだ。

 

出所) FAST COMPANY https://www.fastcompany.com/40533229/googles-new-ai-may-be-able-to-tell-youre-sick-just-by-looking-at-you

AI技術をスキンケアに活用するStart up “Proven” 新サービスをローンチ

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(source FAST COMPANY)

シリコンバレーを拠点とするアクセラレータの Y Combinator(YC)が支援するProvenが、AI技術を活用して顧客一人一人のニーズに応じたスキンケアサービスを提供を開始すると発表した。

 

Provenのwebサイトに登録したユーザは簡単なアンケートに回答すると、Provenのデータベースが100,000のプロダクトと20,000の素材の中から顧客それぞれに最適なスキンケアのプロダクトを解析して提案するという仕組み。

 

こうした一般消費財へのAI技術の適用が、新たな価値を提供し、新たな市場を開拓する事例は今後もどんどん増加していく見通しだ。

出所) FAST COMPANY “This company is using AI to make personalized skin care”  https://www.fastcompany.com/40534895/this-company-is-using-ai-to-make-personalized-skin-care