Innovation Strategy Times

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マッキンゼー デジタル革命時代の異業種競争戦略

楽天楽天市場(EC)に加え、楽天カード(クレジットカード)を提供している。楽天とは小売なのか金融会社なのか?

同じくアマゾンもテンセントももはや1つの業界で括ることはできない。

 

スティーブ・ジョブズは、”顧客は自分が何が欲しいのか、それがはっきり示されてようやく理解する”という言葉を残した。楽天のケースでいえば、楽天市場においてクレジットカードという商品を指し示したことで顧客は欲しいものを手に入れることができたことになる。

 

マッキンゼーのMckinsey Analyticsでは、顧客中心の、それぞれの機能がシームレスでかつシナジーのあるバリュープロポジションが今日のデジタル革命時代において競争優位な価値になると提唱した。

すなわちエコシステムのオーケストラレーターこそが、デジタルにより垣根を失った異業種間の競争の主役になるとしている。

 

マッキンゼーが世界で複数業界のCEOにインタビューを実施したところ、このような異業種間競争をほぼ全てのCEOが脅威と捉えており、時に異業種参入を繰り出すプレイヤーは自社が長年付き添ってきた顧客に対し、自社以上の顧客理解を有していると回答した。

 

こうした新しい異業種参入プレイヤーを躍動させる背景には新しい3つの価値観がある。

1. エコシステムの構想

2. データの多様性

3. 顧客体験の追求

 

エコシステムの構想とは、同一業界の競合を意識するという閉じられた脅威への対応ではなく、自社の価値の可能性を拡大して新しくどんな価値が提供できるか検討することだ。

顧客にとって、複数の取引を行うことは時間や手間の観点で苦痛となる。例えばAppleスマホを持つユーザにApple Payを提供することでシームレスな顧客体験を可能にした。

 

データの多様性とは企業がおのおの持つ顧客への理解を繋ぎ合わせて更なる顧客理解に取り組むことを指す。

エコシステムの構想を深めることで、自社は何を抑えていて、どこにデータのホワイトスペースがあるか、それを埋めるためには誰と協力しなければならないのかを把握する。

このとき、自社のデータをAPIを構築し、よりスムースに提供できるかが今後のオープンイノベーション において企業の基本的な姿勢として求められるものとなる。

 

顧客体験の追求とは、顧客との関係こそが自社が顧客理解を深められる重要なタッチポイントであり、それを失わないよう、かつより多くの接点が持てるよう、カスタマージャーニーを分析して顧客のペインを積極的に解消する志向を指す。

自社調達にこだわらず、顧客体験を向上させるために他社の価値をバリューチェーンに組み込む、あるいは自社が部品になるという観点だ。

 

ジョブズが期せずして”connect the dot”と唱えたとおり、点ではなく線での、かつ動的な価値提供こそがデジタル革命時代での競争要因となる。

異業種競争戦略とは古くから提唱される戦略論であるが、今日ますますその意義が増していると言えるだろう。

参考) Mckinsey Analytics  “Competing in a world of sectors without borders” 

 

異業種競争戦略

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